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アルファの匂い?
ここは笑うべきなのか、はたまた怒鳴るべきなのか、リンに襲い掛かられた身としては考えさせられた。結局、アスカは問い掛けるような曖昧さで気持ちを落ち着かせたが、そうなったのも、アルファのせいと言い切れる自信がアスカにはあった。
アルファはリンの掟破りな恋について語るうちに、ヴァンパイアへの恨みを増大させたようだ。黒に近い茶色の瞳に散らす黄金色の色彩に輝きが増し、それまでは僅かに鼻をくすぐる程度で気にならなかった獣臭も強まっている。瞳の色を完璧な黄金色に変えていないのを見ると、まだまだのようだが、理性を保って興奮した時の獣臭には、そうした初期的な動きはなさそうだ。鼻を刺激する匂いは強烈で、感覚を一気に麻痺させる。その後を思えば、一様に甘く魅惑的な香りとなるのもわかることだ。
「クソっ」
横にずれたくらいでは、アルファの匂いから逃れられない。だからといって後ろに下がるのは、負けた気もして面白くなかった。
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