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踏みにじろうと?

「くぅっ」  アスカは悔しげに唸り、ガラス越しに差し込む日差しをむすっと眺めた。自然界の精霊が眩しく漂わせる声音が憎らしくてならないが、眩しさのトップを飾る腐れ男には憎らしさ以上の腹立たしさを感じてならない。 「クソったれがっ」  男は主役だけあって、アスカのかしましい精霊達にはモテモテで、自然界の聖霊も精気を分け与えるくらいに肩入れをする。見た目の良さと付き合いの長さからして、男を贔屓したいのもわかるが、彼らにとってより大切なのは、この世で唯一聖霊の声が聞こえるアスカのはずだ。それなのに彼らはアスカに甘え切り、からかっては楽しんでいる。死者の声に震えていた幼い頃を思えば、からかわれるのは屁でもないが、男ばかりが贔屓されるのは面白くない。それでアスカは男に向かって声を張り上げた。 「おいっ!」  これは八つ当たりであって、焼き餅ではない。その微妙な心情を踏みにじろうというのだろう。男には完璧に無視された。

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