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ヤヘヱはどこに?
「は……っ?」
アスカの驚きは、聖霊でありながらも腐れ男の側役となったヤヘヱの声が、マントに隠された身のうちから響いたことだった。
「なんで?」
ヤヘヱは腕時計を宿り場所にする。男が手首にはめる高級実用時計は大のお気に入りで、男と共に行動する時は、常にそこに宿っている。歴史と伝統を感じさせるアンティークもののそれは、ヤヘヱによると、男がヤヘヱの願いに応えて買い求めた物ということになっている。アスカには腰巾着らしい思い込みにしか聞こえない話だが、小心者の癖に威張りたがりのヤヘヱには似合いの宿り場所であるのは否定しない。そのヤヘヱが〝我らが殿〟と仰ぐ男は、アスカをかかえて自動ドア近くへと瞬間移動し、クソったれな一言を耳に残して、これまた瞬間移動で、しれっと受付前へと戻っていた。
「てか……」
ヤヘヱはどこにいるのだろう。声がした方向からすると、男が手首にはめる腕時計に鎮座しているとは、まず言えなかった。
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