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嫌という程に?

「っうと……」  今更ながらだが、アスカは思い出していた。フジの玩具のような腕時計にも、ヤヘヱは揚々とへばり付いていた。 「ってことは……」  呟くと同時に、焦り気味にマントをばたつかせ、最後には諦めたようにロングドレスの袖口に視線を向ける。腕時計好きはやはり腕時計を宿り場所にしていた。 〝うぬっ?〟  ヤヘヱにすれば、男の糧となった時点で、アスカも配下の一人となるのだろう。腕時計に我が物顔で貼り付いて、強気に聞き返す様子には、占いの小部屋で見せたような弱々しさは微塵もない。男の名刺が居心地悪かっただけなのかもしれないが、あの時はまだヤヘヱの煌めきにも、アスカはちまちました可愛らしさを感じていた。腕時計に浮かび上がる仄かな光に漂う煌めきには、威張りたがりらしい尊大さしか思えないでいる。 「クソったれがっ!」 〝うぬぬぬっ!〟  腕時計と怒鳴り合うくらいおかしなことはない。それはアスカにも嫌という程にわかっていた。

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