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真昼の決闘?

 時代が変化したあと、世間の目がモンスターに集中したのは容易に想像が付く。当時に生まれていたのなら、アスカも同じ思いで眺めていたと思う。そうした人間達の恐怖と好奇心が渾然と溶け合う視線を前に、モンスター達が服装や行動といった体裁で対処したのを責められはしない。それを極めたのが人間の過去を持つヴァンパイアと人狼だ。腐れ男とアルファの洒落者過ぎる装いを見てもわかる。〝バトルと申す手合わせ〟を特別調査での睨み合いにしたのも、心身共に脆弱な人間達をよく知るからに違いない。 「で、どうよ?」  つまり男が『人間外種対策警備』に来たのは、〝バトルと申す手合わせ〟も覚悟の上となる。確かにエントランスホールは閑散とし、外を行き交う人影もまばらだった。それでもヴァンパイアと人狼が全面ガラス張りのホールで真昼の決闘を始めれば、何かしらの騒ぎは起こる。アスカがヤヘヱに話し掛けるのは、そこら辺りを喋らせたい為でもあった。

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