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見やすいように?

〝うにゅぅっ〟   甘ったれの我がままらしいヤヘヱの叫びを聞くに付け、噂好きのお喋りに無駄な問い掛けをしたものと、アスカはつくづくと嘆かされてしまった。ヤヘヱは〝バトルと申す手合わせ〟に興奮する余り、意味不明な声を上げている。実体があったのなら、ぴょんぴょんと跳ねているところだろう。大人ぶって跳ねないにしても、紅潮した顔で腐れ男に熱視線を送っているはずだ。 〝あじゅまじゅまじゅだじょ〟  アスカにはヤヘヱが何を言ったのかはわからないが、腹は立たなかった。高ぶる気持ちは幾らも理解する。どういった因縁があるにしても、愛にも似た二人だけの世界を作る程の熱情で戦おうというのだ。なまじ仲裁に入れば、あとで絶対に後悔させられる真昼の決闘でもある。期待値マックスなのはヤヘヱだけではない。 「ああ、俺もだぜ」  アスカは軽快な調子でフードを揺らし、ヤヘヱにも見やすいようにと腕を組み、〝バトルと申す手合わせ〟へと目を遣った。

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