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一応は精霊?
「な……っ!」
それが率直な思いだった。人生はそうそう予想通りに行かないのを痛感するばかりで、他に言葉も続かない。
「うぅぅっ」
能力者に生まれたことに始まるアスカの人生は、この十八年、両親をも中傷する理不尽な陰口に終始した。聖霊達に助けられ、生き方を学び、誤魔化しと怒鳴り声と明確な意思を込めた拳を手にして救われたのだ。聖霊達には感謝しかないが、彼らの自由気ままさに振り回されるとなると話は変わる。現状においても、そこを思うべきだった。
ヴァンパイアと人狼の戦いは超人的だ。人間の目で追える代物ではない。決闘の場であるホール内も、たまにどこからか風が吹き、アスカのフードを揺らしはしても、閑散としたまま至って平穏な趣を見せている。それなのにヤヘヱは興奮の極致にいる。はぐれ者でも一応は精霊なのだから、何ら不思議なことではない。それがアスカには悔しかった。
「クソったれが!」
取り敢えず怒鳴って気持ちを宥めた。
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