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光速度で戦われ?

「てかさ」  ホール全体を意識したことで、アスカにはわかったことがある。人間の目では到底追えないヴァンパイアと人狼の超人的な決闘も、〝落ちこぼれの用なし〟と言われる能力をもってすれば容易ということだ。そう思えたのも、ガラス越しに差し込む日差しの秀美で躍動的な輝きを目にしたからだった。  人間種社会で暮らしていた頃、自然界の聖霊はアスカが喧嘩を始めた時にだけ、その気配を鮮明にしていた。殴り合いに呼応し、周囲の空気を震わせ、光の粒を弾けさせていた。組んず解れつの大乱闘でも、ホールに見るような異様な眩しさで存在を誇示し、余計な手出しをせずに傍観者に徹し、汗臭い拳の応酬を楽しんでいた。 「けどよ」  相手がモンスターとなると、彼らは行動を起こした。時間と空間を歪めて、襲い掛かるリンの素早い怪力を無効にしたのだ。アスカの思いもそこにあった。光速度で戦われようが、時間と空間の歪みの中でなら、並みの速さで眺められる。

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