445 / 814
したいように?
「ってもだ」
アスカはむすっと言って、組んでいた腕を解いた。光速度を並みの速さにするのには、自然界の聖霊に自発的にその気になってもらう必要がある。アスカにとって聖霊のおこぼれを頂くような行為だが、構わなかった。恥ずかしげもなくフードの奥でウホウホしてやれた。
「なのに、ガチにハブりやがってよ」
腹の底で膨れ上がる苛立ちのままに、そう言葉を繋げた。かしましい精霊達やヤヘヱ程ではないにしても、自然界の聖霊も気紛れに動く。無駄口を叩かず、気品に溢れていようが、自己を中心に、したいように楽しむ。
「だよな?」
それが低く脅すような調子に響いても、アスカに他意はない。ここに突っ立ち、いたずらに時間を費やすより、ヌシの用件を後回しにし、男の〝癒し〟探しに向かう方が幾らも為になる。その思いから口にした台詞だった。
「俺もしたいようにするぜ」
アスカは軽やかに続け、颯爽と自動ドアを抜けて『人間外種対策警備』の外に出た。
ともだちにシェアしよう!