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ヤヘヱが黙る?
〝いじゅごべ?〟
カフェに向かって歩き出した途端、耳に響いたその声が、アスカには驚きだった。ヤヘヱの声なのは疑うべくもないことだが、てっきり男の腕時計に戻ったと思っていただけに、しつこく付きまとわれることには意表を突かれた。意味不明な喋りに込めたヤヘヱの思いを察してみると、男に言われて仕方なくといった気がしてならない。ヤヘヱは『人間外種対策警備』のエントランスホールでの激闘を眺めたがっている。それがわかるからこそ、アスカも意地を張った。カフェに向かって黙々と歩いて行ったのだ。
〝うにゅっ、我りゃらがどのをまじゃれよ〟
アスカが腕をマントの中に収めたせいで、くぐもった声音にはなっていたが、居丈高に続けた喋りには、僅かでも言葉としての体裁が整っていた。腐れ男を待てと、威張りたがりらしく叫んでいたように響く。
「ふん」
アスカは咄嗟に鼻先であしらったが、男を盾にするくらいだ。ヤヘヱが黙るとは思えなかった。
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