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土産物が揃う?

 観光化といっても、立入禁止の看板ばかりで大して見るものはない。〝私有地につき〟という現実的な表現も、聖霊の棲み処に侵入する恐ろしさを理解しない人間への配慮だが、アスカの両親や客にそうした気遣いは無用だった。死者を引き連れて来たとしても悪さをさせず、逆に守ってくれていた。  両親は別荘まで車を走らせる。横手に駐車出来るからだが、客はツアーでも個人でもカフェの駐車場を利用する。二十分程の距離を歩くのは、僅かな道筋に摩訶不思議なパワーを感じると、客のあいだで囁かれ始めたからのようでも、アスカは気にしない。魔女と信じての自然な反応だ。客が求める神秘さは大切にする。  大半の観光客が求める神秘さを言うのなら、真正モンスターとの遭遇になる。毛むくじゃらな山男が給仕するカフェはその為にある。休日には山男によるパフォーマンスが催され、アスカの通うスーパーには土産物が揃う。これも恐怖が拭えない人間への配慮と言えた。

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