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同じ台詞を?

 ヤヘヱが指定した〝いつもの席〟へと導く案内係の足取りは、逞しい背中を優雅に見せる程にゆったりとしたものだった。その歩調のまま、丸太小屋風の巨大な外観と調和する広々した店内を奥へ奥へと進んで行く。お陰でアスカものんびりと、高天井の開放感に満ちた空間を心行くまで好きに眺められた。  開店当初、モンスターカフェという呼称には、お化け屋敷といった意味合いが多分に含まれていた。今では単なる愛称になっている。休日のパフォーマンスにも使われる恐ろしい顔付きをした仮面が壁にずらりと飾られていようが、誰も怖がらない。仮面には魔を祓う力があり、山男達の勇壮な踊りと共に人気を博している。 「おおっ」  そうした仮面に見詰められ、アスカは感動し、つい声を漏らしてしまった。魔女をイメージした装いが余りに自然で、露骨に避けていたのがアホらしく思えるくらいだ。それでヤヘヱに言ったのと同じ台詞を自分にも続けた。 「いい感じじゃね?」

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