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いっとう弱ぇの?

 案内係の大きな体が悠々と歩けるのでもわかるが、通路にも半端ない広さがあった。その開放感たっぷりの空間を人間サイズにしようという、モンスターらしい奮闘も見て取れる。種々雑多な観葉植物を、密林さながらに並べさせていたのだ。それと邪魔にならない位置に、無垢材で作られたテーブル席が、居住区用と観光用とに分けた形で、雑然とした雰囲気になるよう配置されていた。  雑然とさせたことには良い面があった。観光用の席の方が多いのを目立たなくする。モンスター居住区の観光化によって出来たカフェだ。モンスターより人間を優遇するのは当然で、入店の際の注意書きにも、そこがはっきりと示されている。天然木のぬくもりに加えて、背もたれ付きのベンチシート型の椅子に、ふっくら柔らかそうなクッションが置かれてあるのも、モンスターの為ではない。 「人間がさ」  アスカは精霊達との付き合いを思い、フードの奥で密やかに呟いた。 「いっとう弱ぇのよ」

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