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壁にぶち当たる?
モンスター居住区の住人を相手に、実体のあるなしにかかわらず、普通の人間が精神的にも肉体的にも勝者となるのは難しい。しかし、数の勝負となると問答無用で人間が勝つ。居住区用と観光用の席数を見るように、同じ作りで目立たなくする程度では、数の優位性を揺るがせはしない。カフェの人気はそういった人間の無意識な思いに支えられていた。
それも休日限定ではある。平日の今日は静かなものだ。人間の気配も巨大な店内の密林じみた観葉植物に埋もれてしまっている。人間の物に宿る精霊達も、注意書きにあった〝騒ぎを起こさないこと〟に従ったのか、おとなしくしていた。アスカの耳には、ゆったりと進む案内係と、魔女らしくひっそりと歩く自分の足音しか響いて来ない。
「てか……」
居住区用と観光用、案内係はどちらのテーブル席にも足を向けないでいた。このまま行けば奥の壁にぶち当たるだけだが、アスカもそれを指摘するような野暮天になれないでいた。
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