468 / 814

さらに不安に?

 アスカにすれば、ヤヘヱのことは重荷でしかなかった。ヤヘヱは怯えながらも偉ぶる頑固者であり、気に入らないとすぐに拗ねる我がまま者でもある。腐れ男の側役と口では言うが、男にどっぷりと甘え、お気に入りの高級腕時計に宿って、まさに大手を振って歩いている。そういったお調子者を操れるのは、やたらと明るいフジくらいなものだ。聖霊の支配下にある個室へも、肩先にヤヘヱを載せて、上役の如き扱いで、堂々と乗り込ませてやったことだろう。アスカも最初のうちは面白がって調子を合わせていたが、フジのように最後までやれるはずがない。男のように甘やかせられもしない。アスカはそこをわからせようと呼び掛けた。 「ヤヘヱさんよ」  その重たげな口調がヤヘヱをさらに不安にさせたようだ。きごちなく漂う煌めきに、小動物にも似た震えが起こり始める。これでは何も言えない。〝うむ〟を繰り返すヤヘヱを思い、こう続ける他なかった。 「いい感じじゃね?」

ともだちにシェアしよう!