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やはりヤヘヱに?

〝うむ〟  これも反射的に答えただけのようだった。アスカの肩先でぎこちなく煌めくヤヘヱには、何を言われたのかを理解している様子は全くない。今もって小動物のように縮こまり、小刻みに震えている。それなのに口調は尊大だった。側役として仕えると決めた男に甘やかされたのがあだとなり、小心者の癖に威張りたがりな個性に目覚めたことで、かつて仲間の精霊達にはない感情的な怯えを知ってしまったからでもある。  それでもヤヘヱは精霊だ。はぐれ者にはなったが、聖霊であることに変わりない。長老とも言うべき自然界の精霊が支配するのなら、カフェの個室も彼らには神聖な場所となり、覚悟を持って入室する必要がある。はぐれ者のヤヘヱにはそれが顕著で、案内係の対応に満足していただけに、男もフジもいないこの状況を不安がるのも仕方ないことだった。 「クソっ」  アスカは自分に向けて悪態を吐いた。わかっていたが、やはりヤヘヱにこう返された。 〝うむ〟

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