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フジを思って?

 アスカの言葉に、案内係が恥じらった。毛むくじゃらなモフモフ顔でわかりづらいが、顔全体をほんのりと赤くしたのは間違いない。思いを悟らせないよう、終始にこやかにしていたのが、アスカの顔を目にした途端、驚き、嘲笑してみせたのだ。堅固であるべき志に反したおのれの至らなさを恥じて当然と、アスカにはそう思えていた。僅かでも称賛があるとは、断じて思わない。  アスカにとって母親似の女顔は泣き所だ。自分の顔にむかつこうが、母親に知られる訳には行かない。顔に吸い寄せられた馬鹿な男達を殴り倒し、蹴散らすことで、むかつきを発散させるしかなかった。それもアスカに罵倒されたがったムチ姫のしもべ達には褒美となり、アスカの方が逃げ回る羽目になった。モンスター居住区に移住したあとは、フードで顔を隠したのが幸いし、彼らと出くわすこともなく平穏に暮らせていた。 「……のによ」  変態に種族の壁はないのだと、アスカはフジを思って呟いた。

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