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やっぱ最高?

「クソがっ」  むかっ腹が立ち、その勢いでつい口にした悪態だったが、頭に湧いて出ようとする忌まわしい記憶を抑えたかったからでもある。 〝大きな声では言えないけれど、僕……〟  声を潜めて続けたフジの言葉を、アスカは思わないようにした。ゲーム好きなヴァンパイアというのにもイラつくが、罵倒も蹴りも褒美と思う秘密組織の会員となると、平静ではいられない。それもこれも案内係が志を全うせず、情動に屈したのが悪い。  アスカには毛むくじゃらの恥じらい顔が恨めしかった。モンスター居住区に移り住んでもなお、変態に付きまとわれる我が身が嘆かわしかった。そのせいなのか、目の端に存在を誇示するような煌めきを捉え、おかしなことに安らぎを覚えた。 「ヤヘヱさんよ」  アスカは弾む調子で呼び掛けた。喋り好きのはぐれ者は威張りたがりの小心者だ。憎らしいが、そこに変態要素はない。その一点を思って楽しげに言葉を繋げた。 「あんた、やっぱ最高だぜ」

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