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片腹痛いわ?
腕時計がヤヘヱの席とは笑えたが、納得もした。ヤヘヱには甘々の腐れ男のことだ。手首にはめるアンティークと比べても遜色ない高級感を漂わせる腕時計を用意し、席と呼ばせるくらいは幾らもしてやるはずだ。そうでなければ、ヤヘヱが待ってましたとばかりにいそいそと、アスカの肩先からテーブルの上の腕時計へと移ったりはしない。
「あんたさ」
アスカは腕時計にへばり付く仄かな光を睨み付け、そこでゆったりと寛ぐ煌めきに向かって苦々しげに続けていた。
「ホント、可愛くねぇな」
〝ふおふおふお〟
ここに腐れ男はいないが、男の腕時計に宿れたヤヘヱに怖いものはない。威張りたがりのジジイに成り切り、口調も古風にして話して行く。
〝我らが殿の側役たるわたくしめに、可愛いなど、片腹痛いわ〟
「……だな」
さっきまで怯えまくっていたのにと思うと、からかってやりたくなるが、アスカは我慢した。こうして調子に乗ってくれているのだ。逆らわない方がいい。
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