ヤヘヱから情報を引き出す方法はわかっている。フジがしていたように、話がおかしな方向に飛んだとしても、まずは〝うんうん〟と頷く。そうしながら煽るように褒めそやし、なおかつ羨ましがってみせるのだ。威張りたがりの小心者を調子付かせるが、知りたいことは聞き出しやすくなる。大切なのは精霊特有の散漫になりがちな話にイラつかないことだ。絶対に怒鳴ってはならない。絶妙な頃合いで和やかに相槌を打ち続ける。そうするうちにヤヘヱは必ず口を滑らせる。 「よっし」 　アスカは決意し、フジにならって明るく微笑んでみせた。アスカなりに和やかさを表現したのだが、取って付けたような笑いになっていることには気付いていない。ヤヘヱの煌めきが怯えたようにぴくりと揺れたのも見逃していた。案内係の穏やかな声が割り込んで来なければ、気分良く〝うんうん〟と頷いていたところでもある。 「ご注文は如何なさいますか？」 　お陰で続く台詞にむすっとなった。