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悪癖に馴染む?
「こうしてお許しを頂けたことでもありますので……」
アスカは何も許した覚えはなかったが、それを指摘することは出来ないでいた。案内係の興奮は喋るごとに増すようで、下手に口にして新たな褒美と喜ばれでもしたのなら、たまったものではない。ムチ姫の〝しもべ〟が見せる従順さは見せ掛けだ。散々に追い回されたアスカだからこそ、本当の〝主人〟がどちらであるのかも理解する。
しもべ達はアスカから罵倒と蹴りをもらおうと、ただただ待ての姿勢で迫り来た。喧嘩上等と生きていたアスカには不気味であると同時に恐怖でもあったのだ。その脅しめいた迫力も人間種社会ならではの悪癖と思っていた。
フジが現れなければ、そうした認識を覆されることもなかった。そこには人間種社会では救いとなった精霊達のかしましい警報がない。不意打ちを食らって逃げる機会を逸する。それだけでもモンスターがこうも簡単に人間の悪癖に馴染むと気付けなかった理由にはなる。
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