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残り僅かだった?
ランチは素晴らしかった。モンスターカフェの人気を山男のパフォーマンスと見るのは早計なのかもしれない。この味なら両親も通うはずと、アスカはデザートのパウンドケーキを頬張りながら思っていた。腕時計にへばり付くヤヘヱが、決まり切った注文であっても、アスカと同様に満足しているのは確認済みだ。したたかに酔った赤ら顔のジジイといった雰囲気で、のたりのたりと光の粒を左右に揺らし、見るからに気分良さげに煌めいている。口も相当軽くなっていることだろう。
「おいっ」
それでアスカは声を掛けた。デザートを食べ終え、ストローでリンゴジュースをすする合間に、何気ない調子に話をする。
「あんたにはよ、それが……」
酒らしく見せているのか、ヤヘヱの側にはガラス製の華やかなぐい呑みが置かれてある。その酒器の底に影のように漂う闇の瘴気が仄かに覗けていたが、アスカが視線を向けたことで、残り僅かだったそれもすっと瞬時に消えてしまった。
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