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返事は軽快?

 闇の瘴気は少しずつ空気に溶け込み、生息地へと帰っていた。そう思えたのも、ガラス製のぐい呑み一杯に漂っていた瘴気がヤヘヱの煌めきに触れては量を減らし、そのたびに周囲の空気が微かに振動していたからだ。人間の物に宿る精霊達を心地良く酔わせる闇ではあるが、闇にすれば彼らをからかっているだけのことだった。安酒好きのヤヘヱははぐれ者だ。高級志向の聖霊達のように節度を守る必要がない。からかい甲斐もあるに違いない。 〝うぎゅっ〟  ヤヘヱが怒って絡んで来たのでもわかる。まだ少しあった闇の瘴気が消えたのは、アスカに〝それ〟と呼ばれた闇が勝手にびくついて逃げ出したことによるが、酔いの回ったヤヘヱにはアスカのせいとなる。 「あんたにはよ、それが……」  アスカはむかついていた。しかし、ここは続けるしかない。 「……あるじゃね?カフェにもそれ目当てに来てんだろ?」 〝うにゅ〟  ヤヘヱの返事は軽快だ。これにはアスカもにんまりだった。

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