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アスカは忘れて?

「ならさ、あいつは……」  ヤヘヱにはアスカがしてもいないことで絡まれた。むかついて何が悪いと思いはするが、酔っぱらい相手にムキになるのも愚かに思えた。喋りたがりの口が軽くなり始めているのだ。うまくつつけば、すぐにも情報が引き出せる。 「あんたの殿様はどうなのよ?」  アスカは笑いに緩んだ気分のままに弾むように続きを口にした。 「あんたみたいなお決まりってあんの?」 〝うぅぅにゅ?〟  アスカの問い掛けに戸惑ってみせるとは大した玉だ。酔っていても忠義を尽くすということだろう。アスカにはそう映ったからこそ、ずはりと聞いた。 「だから、野郎がカフェに来る理由だよ」 〝にひひ、ふぉんにゃふにょきゃ〟  ヤヘヱの素早い返しは思惑通りだが、こうした場合に生じる重大な欠陥を前に、喜びはすごすごと引っ込む。酔っぱらいヤヘヱの喋り調子は怯えた時以上に怪しげで、情報を手にしたとしても意味不明で用をなさない。それをアスカは忘れていた。

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