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希望はあった?

「クソっ」 〝ぐむっ〟 「てめっ」 〝にゅにゅ〟 「なめてんじゃねぇぞ」 〝ぶぶっぶぶぶっ〟  ヤヘヱの意味不明な返しがアスカには憎らしくてならなかった。のたりのたりと光の粒を揺らす煌めきにも、おどけた様子が窺える。 「ふざけやがって」  アスカは悔しげに呟いた。したたかに酔った赤ら顔のジジイがすることだ。まともに取り合う価値はない。それでも諦めるには早いと、意地になって会話を続けた。 「だから、あいつはさ、このクソったれな椅子に座って何してんだよ」 〝にひひ、ばじゃぐじべにじぎゃれまじゅりゅにゃ〟 「な……なんだって?」 〝べぶじゃりゃ、我りゃがじょにょにじぎゃじぇるぎゃじょろじ〟 「我……?」  そこだけはアスカにもはっきりと聞き取れた。一文字だけでも理解出来たのだ。これを前進と捉えられなくはない。〝我〟の一文字にアソコがぴくりと震えなければ、状況の改善も図れたはずだ。希望はあったと、そう思うことで悔しさも宥められる。

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