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ケツ推し?
〝ふにゅぅぅ〟
ヤヘヱの意味不明な喋りが理解出来ないとしても、甘ったれた声音が物語ることの意味はわかっていた。鼻腔をくすぐる爽やかな匂いに、部屋の空気がふわりと浮かび上がったのでも知れることだ。個室に存在する全てのものが、アスカには腐れ野郎でしかない男を歓迎し、喜びに打ち震えている。高窓になっているカッティングガラスから差し込む光も、自然界の聖霊がもたらす吐息に触れて、より輝きを増したのは言うまでもない。
そういった彼らに刺激されたのだろう。裏切り者のアソコが二度目のぴくりをアスカに伝えた。制御し切れない震えには苛立ちしかないが、アソコは目くるめく愛欲の炎を頂くのに重要な役目を担う仲間ではある。その美味しい役目を思えば、裏切りにも腹を立てず、笑って遣り過ごせる余裕が欲しい。それでアスカはにやりとして言った。
「ったくよ」
男へと顔を向けて、嫌みったらしく話して行く。
「俺のケツ推ししてんじゃねぇぞ」
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