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アルファと二人?
完璧な無表情を貫く男の思いは、アスカにはわからない。精霊達が噂しないというもっともな理由からではなく、無表情であっても、男が微かに首を傾げたことによる。男には〝ケツ推し〟が奇妙で不気味なものに思えたのかもしれない。とするのなら、怪しい喋りのヤヘヱに苛立つのと同じ心境にあると言えそうだ。アスカにも自分のケツを易々と差し出す気はないのだから、男を不安がらせたことには気分上々になる。
とはいえ、突然カフェに現れたのを思うと、悩まされはする。アスカがランチで腹を満たしているあいだも、男は人狼のアルファと超人的な速さで戦っていたはずだ。
「……のに、なんで?」
アスカは胸のうちで呟き、男をまじまじと眺め直した。タートルネックニットにスーツという黒を基調とした姿はすっきりとして、僅かな乱れも見られない。額に掛かる髪の一房も小粋なままだ。アルファと二人、和やかに茶でも飲んでいたかのような平静さが男にはあった。
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