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不動の美に?

「騒ぐなと……」  男の静かさが上辺だけでないのは、渋さの中にも甘さのある官能的な響きでしっとりと返して来たのを見ても明らかだった。それが男の地声であるだけに厄介でもある。アソコが俄然奮起するからだ。ロングドレスを押し上げるぴくりぴくりは仕方ないとして、その不審な動きを男に気付かれたのかというと、やはりアスカにはわからないことだった。それ程までに、アスカの視線を軽くかわして向かいの椅子に腰掛ける男の無表情は完璧で手抜かりがなかった。 「君にそう言い置いた」  ところがこう続けられたことで、表情では計れない男の思いに触れられた気がする。『人間外種対策警備』のエントランスホールにいるはずのアスカが了承も得ずに姿を消した。それが男には許せないのだ。男の着席と同時に、アルバイト風の給仕がテーブルに運んだグラスを掴み取り、一気に飲み干す様子にも憤りを思わせる。もちろん男の無表情は完璧で不動の美に揺るぎはない。

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