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聖霊を楽しませて?

 光と闇に違いはない。自然界の聖霊は滅多なことで怒らないが、些細なことで意固地にもなる。機嫌がどちらに向くのかを見間違えでもしたのなら、悲惨な目に遭わされる。違いはそこに人間が感情を添わせたことで生まれたものだ。  時代の変化はそうした違いにも影響を及ぼした。モンスターの出現は人間の恐怖を明確にし、聖霊という曖昧な存在を気に掛けなくさせた。聖霊は穏やかに過ごせるようになり、畏怖させる程の力でおののかせるような出来事でさえ、殆ど起こさなくなった。支配下にあるこの個室に、幻の空間という異次元であっても、細く柔らかな声を響かせるのを許すくらいの機嫌の良さだ。それでわかった。声は精霊に引き寄せられていた。 〝家臣の皆様とて、悩みわずろうておりまする〟  細く柔らかな声を聞きつつ、アスカは思い知る。美貌で家臣を悩ませたとは、アソコの裏切り同様に笑える話ではあるが、聖霊を楽しませているのでは、それもままならない。

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