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探りを入れて?

「クソがっ」  続けて口にした悪態も、気まま過ぎるヤヘヱを思ってのことだった。自然界の精霊も似たようなものだが、ヤヘヱのように男に守られ、甘やかされるのではなく、男を守り、甘やかしたい立場だからこそ、アスカに言わせれば、悪巧みに長けたろくでなしとなる。超然とした堅物であるのなら、男の美しさを芸術品と位置付け、微笑ましく崩させる不埒な喜びを求めたりはしない。  それもこれも飲んだくれたヤヘヱが悪い。お調子者程度に正気が保たれていたのなら、アスカも男から情報を引き出そうとは考えなかった。幻の空間は現れず、男に八つ当たりしようという気にもならずに済んだ。それでも男を怒らせ、無表情を完全になくさせたのだから、全てが失敗とは言えないのかもしれない。 〝なれば私も問おうか、君は何が知りたい?〟  こう切り返されなければ、今も男をつつき回しているだろう。そして頃合いを見計らい、〝癒し〟について探りを入れていたはずだ。

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