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あんたにはいる?
「っても……」
今更な話と、アスカは思った。男を煽って、より感情的にしたところで何気なく問い質すつもりが、一足飛びに叶ったということは、最初から男に見透かされていたことになる。本当に忌々しいばかりだが、気持ちを落ち着かせてみると、それも不思議とは思えないでいた。
男はヴァンパイアだ。耳聡いモンスターでもある。加えて、噂好きの精霊達に熱狂的に愛されている。アスカの居場所にしても、支離滅裂ながらもルンルンと弾む声音で聞かされたに違いない。その先に楽しみがあるとわかれば、彼らは大いに喋り倒す。そこはアスカも諦めるしかないが、だからといって認めた訳でもない。落とし前はあとでしっかりと付けさせる。
「てか……」
男に直接聞ける機会が得られたのだ。ふいにするような間抜けにはなれない。腹は立っても冷静さをなくしたりはしない。
「あんたにはいるよな」
アスカは僅かに間を置き、せせら笑って続けた。
「〝癒し〟ってのがさ」
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