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あいわかった?
〝ウフフクフフ〟
男の返しに合わせるように、アスカの耳に精霊達の声がする。平日でも物見遊山な人間達が、カフェのランチを目当てに寄り集まって来たのだろう。観光用の席から幾重にも重なって響いて来る。その喋りがどこか遠慮がちに届くのは、アスカを気にしてのことではない。噂に騒ぐ彼らは自由奔放だ。アスカの怒号にも、思うがままに振る舞う。とするのなら、らしくない遠慮も男を気遣ってということになる。
〝代表に教えたよ〟
それでも聖霊達は声を揃えて楽しげに、男というよりアスカに聞かせたいが為のように、かしましく喋り合っていた。
〝アスカはカフェにいるってね〟
〝知りたいことがあるんだって〟
〝だけど山男さん追い出しちゃった〟
〝ヤヘヱはべろんべろん〟
〝だからまだ何も聞けてないの〟
「うるせっ」
アスカは思わず声を張り上げたが、男は聞こえないふりをした。アスカの叫びもなかったことにして、こう平然と続けていた。
「あいわかった」
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