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男の語りを?
マジわかる。それがアスカの率直な思いではあったが、口にはしないでいた。自由気ままな精霊達には何を言っても腹が立つ。自然界の聖霊にしても、上品にしているだけで中身は全く変わらない。彼らの行いに誠意がないとは言わないが、自己中心的な喜びを基準とするのは否定出来ないことなのだ。
聖霊達が『人間外種対策警備』のエントランスホールでアスカにしたのが、最たる例だ。リンに襲い掛かられた時には助けても、男とアルファの戦いにおいては平気でハブった。実に聖霊らしい行動であり、文句の付けようがない。リンとアスカでは戦闘能力の差が歴然で、勝負として楽しくないが、男とアルファは互角に渡り合え、眺めていても楽しい。
「君にはわかるであろう?」
ここでもアスカは黙っていた。頷くこともしないでいた。愛はなくとも同じ悩みに背中を叩き合えたのなら最高と思うが、沈黙が男の語りを滑らかにするようにも思えた。それでは黙るしかないだろう。
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