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君の軽薄さに?
「あんたさ」
アスカは黙っていられずに口を挟んだ。
「話し過ぎじゃね?」
棺に横たわる麗しさは、ただそこに存在するだけという理由で、男から愛欲の炎を頂くはずのアスカの計画を見事に潰した。期待した自分が間抜けだったのだ。フードを被ったのも、そうした自分を哀れんでのことなのに、気の利かない男はしれっと〝癒し〟への思いをアスカに聞かせた。
むかついてならないが、怒鳴り付けるまでには至らなかった。〝癒し〟と修羅場ることで男の魂が解放されると信じていたのだ。余りに惨めで怯みもする。慈善でやるにしても方法がわからない。それでこうおとなしめに言葉を繋げた。
「過去は秘密なんだろ?」
「君の能力をもってすれば、詮無いことぞ」
言いながら男は棺の蓋に手を掛け、一気に押し開けたあとで話を続けた。
「余計なことを考えなければな、我らが恐れるものとて、過去ではないと知れようぞ、だが、悪くはない、君の軽薄さに、ヌシが警戒を解いた」
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