535 / 814

死は宿命?

 男が褒めていないことはアスカにもわかっていた。精霊達の喋りをろくでもないと切り捨てず、理解しようとしていたのなら、モンスター達の秘密にも迫れていたというのだ。そう言われても、男が現れなければ、かかわるつもりがなかったのだから、アスカにすれば空虚な言い掛かりにしか聞こえない。  モンスター居住区には平穏を求めて移住した。人間相手に占いだけして暮らす人生に、聖霊とモンスターとで交わされた約束事は邪魔でしかない。それが余計な考えだとしても糞食らえであり、ヌシに警戒されなくなったとしても、蛙の面に小便程度のことなのだ。軽薄?これぞまさしく上等と、アスカはフードの奥で小馬鹿にしたように鼻を鳴らした。そしてマントに隠す腕を憤然と組んだ。  それを男が続きを促すアスカの返しと捉えても、正さないでおいた。むしろ沈んだ調子に声音を変えた男を気にして、少しだけ体を寄せて聞き入った。 「御台の死は宿命、話したとて構わぬ」

ともだちにシェアしよう!