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やりやがった?

「無理強いなど、せぬわ」  男には即座に返された。アスカが幾ら突っ張ってみせようが、最終的には黙っていられずに話すことになると、そう確信しての返しなのだろう。男は片方の口の端を不快そうに吊り上げても、声音にからかうような楽しさを伴わせていた。 「クソがっ」  それがアスカを苛立たせた。沈黙してもすぐに口を挟んだのを揶揄されては、むかつきもする。 「けど……」  アスカにも考えがあった。ここは騒ぎ立てずに穏やかに、男にとって避けたいはずの話を、逃げ道を塞ぐようにずはりと言ってのけるのだ。 「で、あんたは家臣に報復した、ってな?」  アスカはフードの奥でにんまりし、直感したことを自信満々に続けて行く。 「精霊の精気でプリップリになれたんだしよ、やべぇ姿も晒してさ、やりやがったんだろ?」  男にからかわれ、楽しまれた。従って、言いたくないのを言わせようとするくらいの意趣返しに罪はない。その程度なら、世の常として理解もする。

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