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自慢の怪力も?

「あんた、囚われてんだしな」  アスカは軽快に言葉を繋げた。 「愛ってのによ」  モンスター達がアスカを恐れる理由に彼らの過去が関係しないのなら、男の気分を損なう問い掛けも禁句とはならないことになる。嫌みったらしく返すのも自由ということだ。 「きっちり、けり、付けねぇとさ、収まらねぇよな?」 「ああ」  男は頷いた。ところがフードを揺らして続きを促すアスカには、こうあっさりと答えていた。 「だが、何もしておらぬ」 「えぇっ?」  さらには戸惑うアスカを横目にし、楽しげな口調にも笑いを含ませ、話を継いでいた。 「変異はただ一つの切なる願いを叶えしもの、報復であったなら、御台は炎に呑まれ、死していた、となればわかるであろう、今を生きるがそうあるように、家臣の命運も人の世の定めにゆだねる他なし」 「っうと……」  男が興味深げにこちらへと完全に向くのを待って、アスカは言った。 「自慢の怪力も俺と同じで使い道のねぇ用なし、ってか?」

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