「君と……同じ？」 　男は声を上げて笑った。 「そうありたいものだが……」 　明るく艶やかな笑いに喉を震わせつつ、続けて行く。 「君は特別ぞ、同じにはなれぬ」 　それを馬鹿にして言ったのでないことは、こちらに向ける男の優美な微笑みで、アスカにもわかっていた。それでも突っ掛かってやりたくなる。 「うるせ」 　男はヴァンパイアに変異までして得た驚異的な力で女を助けたというのに、守り切ることが出来なかった。人間への力の行使が、変異におけるただ一つの願いを叶えることのみでは、仇討ちは叶わぬ夢だ。家臣の命運は人間が決めるのであって、モンスターとなった身には成り行きを見守ることしか許されない。それをアスカは自分と同じに〝用なし〟と言って慰めたつもりが、男には面白がられてしまった。 「私は待っていた」 　不意に続けられたことにも、聞き返したりしないでいた。男がフードに隠されたアスカの瞳に語り掛けたのを、知らないふりをする気はない。