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微かに悲しみを?
「っん?」
アスカはフードの奥で小さく呟いた。呆けていた意識にするりと入り込んだ男の言葉を胸のうちで繰り返す。
「終わり?」
ヴァンパイアにとって何を意味するのかは、すぐにわかった。男は変異に失敗した者の魂が行き着くまったき闇のことを話している。それを明るく楽しげに語っていたのだ。
「変異に忘れてならぬは対となる魂ぞ、恨みには恨み、妬みには妬み、愛には愛、とな」
なおも続く男の話に、アスカは聞き入った。
「願うは死、求むるは魂、果報によりて免れたる代償に、変異をなせずに落ちた者が行く闇へと落とすのよ、だが、愛は死を願わぬ、それ故、対となる魂が新たに人の世を生きるが為に戻るたび、愛に背かれぬかを試される、背かれし時、闇に落ちるも変異をなした者の魂ぞ、とは申せ、化け物となった身に人の愛など不相応、御台とて御台に非ずで……」
男はそこでほんの微かに悲しみを見せてから、さらりと言った。
「さればこそ、私は待った」
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