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首の皮一枚と?
モンスターの死は塵となって訪れる。ヴァンパイアにしても、塵になれば変異に失敗したのと同じで、浄化も難しい悪と化した死者が行くまったき闇の住人になるしかない。愛による変異も例外とはならず、浄化の機会が与えられはしないと、アスカはそう思っていた。
男の話はアスカのそうした思いを認めたようなものではあった。対となる魂については、変異に必要な激しさを勘案するのなら自ずと理解もすることだが、闇を通して繋がる魂同士の密接な関係となると初耳だった。何にせよ、変異したからには、食い逃げじみた真似はさせないということなのだろう。
「愛には愛、ってな」
アスカは胸のうちで続け、奥深くに宿る女を思った。そして〝もろタイプ〟と興奮し、愛欲の炎を頂こうと決めたことで、男を闇に落とさずに済んだと気付く。いちゃつくどころか、むかつくばかりの付き合いだ。首の皮一枚といった状態と思うが、それで男をこの世に繋ぎ止めてはいるようだ。
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