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言葉の一つ一つに?
男が望んだ〝終わり〟を、わかりやすく言うのなら〝死〟となる。男は塵となってまったき闇に落ちるつもりでいた。変態屋敷を建てたのも、好かれようとしてのことではない。変異に決着を付ける為に、愛とは真逆の嫌悪をいだかせようとしてのことだ。ところが現実はおかしなもので、アスカの正直なアソコの甲斐もあってか、未だ男は、魂共々、誇り高げな美貌でこの世にとどまっている。聖霊がかかわっているのだ。むざむざと男の思い通りにさせる訳もない。
そういえばと、アスカは思い出していた。初対面というのに、男は占いの小部屋でアスカを笑った。待ちに待った女の生まれ変わりが精子持ちで、モンスターにとって〝特別〟な能力者とあっては、笑いたくもなる。
「これなるまぼろしを戒めとし、御台が戻るを、ひたすらに待った」
何気ない調子に続ける男の話も、占いの小部屋でのようにアスカを苛立たせた。言葉の一つ一つに女への愛を思わせてならないからだ。
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