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横顔に声を?
「待つも虚しと思いやもうた時ぞ」
男の話は滑らかに止めどなく続く。
「君が現れたは」
微かに見せた悲しみも、とうにない。男は視線を棺に向けたまま、目尻に皺を寄せて柔らかに微笑んでいた。
「いや、出会わされたというが正しきこと、聖霊どもに囲まれてな、ヌシが君を恐れるもそこにある、使い道のない用なしと思うは、君ら人間のみぞ」
話が〝用なし〟に戻るとは驚きだった。ヌシを恐れさせようが、力を使いこなせないのでは、アスカにしても役立たずと思うより他ない。男をこの世に繋ぎ止めたのも、愛欲の炎を頂くと決めたアスカの野心と、正直なアソコの奔放さであって、力の関与は皆無だ。魂の解放をするにしても手探りという無能ぶりで、人間相手に占いしか出来ない〝用なし〟に変わりはない。
「あんたさ」
アスカは我慢ならずに男の美しい横顔に声を掛けた。これ以上ないといった勢いでむすっとし、その腹立たしさに任せて言葉を繋ぐ。
「マジ、クソだな」
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