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なすべきこと?

 男には楽しまれている。からかわれていると、そう感じて当然だが、男の微笑みには馬鹿にしたところはない。皮肉や嫌みも匂わせていない。裏がある訳でもない。純粋に楽しんでいるだけなのだ。 「ふふっ」  男に鼻先で軽くあしらわれたのでもわかる。男はクソ呼ばわりされても平然とし、逆にそれを喜ぶように明るく話を続けていた。 「君に昔か今かと問われ、気付いたのよ」  確かに言った。モンスターカフェの個室で男に顔を近付け、なめ腐った目で見ているのが昔か今かを問い掛けた。アスカには今しかない。そこをはっきりさせようとして言ったのだ。それで男を激怒させ、仕返しのように瞬間移動でカフェの外に連れ出されたと、腹立たしさの中で思い起こす。 「気付いた?」  アスカはむかつくままに聞き返した。棺を前にしては間抜けなばかりだが、男の台詞がどうにも引っ掛かってならない。 「何を?」  思わず続けた。すると男が間を置かずに答えた。 「なすべきことを」

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