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こちらのものだ?

 アスカはむすっとして頷いた。内心ではけちょんけちょんに遣り込めたく思っていたが、我慢した。ヤヘヱは威張り腐っていようが小心者だ。軽くびびらせる程度のことは、アスカには苦もなく出来る。男の側役と自認しているのだから、八つ当たりをするにも気兼ねはいらない。その全てを忍んで、アスカは素直に頷いていた。 「闇ね」  またも酔えるのを楽しみにしているヤヘヱに逆らってはならない。拗ねられでもしたのなら、話がややこしくなる。ともすれば、闇の領域を従える奇怪な山に夜通し迷わされるかもしれない。そうならない為に、こう陽気に続けた。 「いいんじゃね?」  そして煌めきが促す先へと足を向け、そこに見付けた獣道をそそくさと下りて行った。闇に入ってしまえば、こちらのものだ。重苦しい溜め息を二つ三つ吐いたところで、見慣れた風景が目に飛び込んで来る。母親が世話をする花々の可愛らしい色彩を意識した時、アスカは別荘の裏庭に着いていた。

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