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預かる以外に?

〝にひひひっ〟  着いて最初に耳にしたのがヤヘヱの意味不明な叫びというのは、如何にもといったところだろう。裏庭から玄関へと向かうあいだも、本日二度目の酔いに、ヤヘヱはすこぶるご機嫌で、まだ明るい周囲に身勝手な歓喜を撒き散らしている。  大の酒好きが巨大な酒樽に飛び込み、泳ぎ回ったようなものなのだ。幸せ過ぎて叫びたくなるのもわかるが、アスカにすれば、それもただの酔っぱらいでしかない。腕時計から肩先に移動し、ほんのり赤い煌めきに光の粒を華麗に弾けさせていようが、鬱陶しいものは鬱陶しい。 〝にひ!ひひ?ひひひ!〟  叫びに抑揚を付けられても同じことだ。こうなるとフジに引き渡すより他ない気もしたが、即座に思い直した。ムチ姫の〝しもべ〟であるフジは秘密組織の変態だ。アスカにとって決して側に寄せてはならない恐怖でもある。 「ったく」  アスカは預かる以外にないと諦めた。それでも肩先を憎々しげに見遣って言った。 「クソがっ」

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