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煌めきがびくりと?
〝にひっ?〟
ヤヘヱにはそう返された。声音には笑うような楽しさがある反面、酔いに高揚し、一気に騒いで疲れたせいか、腑抜けたような弱々しさも感じさせる。モンスターカフェでもそうだったが、どうやらヤヘヱは酔っぱらいの例にもれず、睡魔に襲われ始めているようだ。ほんのり赤かった煌めきに翳りが漂い、華麗に弾けていた光の粒にも鈍さが浮かぶ。
眠るといっても、ヤヘヱは精霊だ。はぐれ者となったことで身に付けた雰囲気といったものでしかない。それはアスカの肩先を寝場所に選ぶといった図太さにも言えることだ。右に左にゆったりと揺れ始めた煌めきは、まさにうとうとし始めたかのように映る。鬱陶しさは同じでも、精霊達は騒ぐだけで、こういった形にアスカの手を煩わせたことはない。
「おい」
肩から転げ落ちそうな揺れを気遣い、アスカは呼び掛けた。反射的に煌めきがびくりとしたが、一瞬のことだ。すぐにまた右に左にと心地良さげに揺れていた。
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