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じりじりした笑い?

 家に入るには誰しもドアを開ける。アスカのような一人暮らしであるのなら、しんとした空気に出迎えられるものだが、聖霊の声が聞こえる能力者となると、そうは行かない。常時、人間が巻き起こす噂に夢中な精霊達の喧騒に迎えられる。 〝ウフフクフフ〟  こうして笑い合うのは彼らには日常で、耳慣れた騒ぎでもあり、どうということはない。 〝それでね、凄いの〟 〝うわぁってなって、ふわぁってなって〟 〝うそうそ、きゃぁってなって〟 〝そんなの、いやぁってなって〟  昨日の静寂が異常だったのだ。これが普通と思っても、いつにも増してのルンルンな騒ぎに、さすがにアスカも顔を引きつらせる。 「ははははっ」  それでもアスカは笑った。楽しさからではない。折角の気分を駄目にしたくなかったからだが、精霊達のけたたましい喋りは呆れる程の激しさで、苛立ちを抑えたアスカのじりじりした笑いも刹那にさせる。すぐに素直な思いの膨れっ面へと変えさせる勢いだった。

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