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頭にメモし?

「こいつもな……」  精霊に腹を立てたところで無駄なことはわかっている。アスカは諦めたように溜め息を吐き、ロングドレスも脱いでスウェットの上下に着替えた。バスルームに行き、シャワーを浴びて心身共にさっぱりさせてからキッチンに戻り、テーブルに置いた手さげかごの蓋を開けて中身を確かめた。瞬間、感動の衝撃に思わず声が出た。 「おおっ」  精霊達への苛立ちも忘れさせるそれは、見た目も豪華な弁当だった。作り立てのようで仄かにあたたかく、しめじと山菜のポン酢和えに海老芋の煮物、甘鯛の味噌漬け焼きに舞茸と銀杏のかき揚げ、栗ご飯に柿羊羹と、そういったお品書きまで付いていた。  アスカはさっそく頂いた。味は言うまでもない。あっという間に平らげ、喜びに顔をにやつかせた。腹が満たされたのだ。未だ妄想に夢中な聖霊達の声も気にならない。手さげかごを片付け、返しがてらの誘いを覚えておくよう頭にメモし、普段通りにパソコンに向かった。

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