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ゆったりと座る?

「……っ」  アスカには嘆きと怒りでしかないこの状況も、裏切り者のアソコには驚きと喜びになる。アスカがまともに話せないでいたのは、ぴくりとするだけでは飽き足らないアソコがスウェットを押し上げようと息巻き出したのも理由にあった。思いと肉体に隔たりを持つ年頃だ。歓喜に迷うのは仕方がない。それでも瞬時に怒りを沸騰させたアスカに負けて、割と早い段階で引っ込んでくれていた。肉欲まみれのアソコも、さすがにアスカの激昂にはたじろいだようだ。  その乖離する心身の攻防に、男が気付いていたとは思えない。仮に気付いていたとしても、悩む程のことはない。男は無表情を常とするヴァンパイアであるのを忘れたかのようにハンサムな顔に笑みを浮かべ、両親が気に入って持ち込んだ座り心地も最高の三人掛けのソファの真ん中にゆったりと座る。そこに見せる優雅で気品のある様子からして、品位に欠ける下ネタで盛り上がるとは、どう眺めても考えにくい。

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