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仁義として心得て?

 アスカの胸の奥深くには、男が愛した女の魂が潜んでいる。わかっていながら、男の匂わせが女に向けたものと、今頃になって気付いた。それがアスカには悔しくてならなかった。男とアルファの因縁に興味はないが、かかわったのが女となると、否応なしにアスカにも関係して来る。同じ関係するのなら、ムチ姫の〝しもべ〟であって欲しかったくらいだ。逃げるが勝ちといった単純な方法だが、魂に宿る女とのかかわりがないだけに、後腐れなく突き放せる。 「ったく……」  男の話からして、アルファが女を見初めたのは確かなようでも、女は男の妻として死したのだから、かどわかすには至らなかったことになる。決着は付いていそうだが、男が変異したことで、事情も変わったのだろう。それでも因縁深い二人の戦いがアスカに責任があるというのなら、あいだに立つのは仁義として心得ている。魂に宿る女に原因があるのでは、勝手にしろといった思いしか湧いて来ないでいた。
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